呼び込み君 開発秘話

1999年 夏の暑い日、群馬電機株式会社 東京営業所にて営業所員7名に囲まれて、本社商品部設計者3名が次期商品企画について討議を行っていた。

現在の商材はLED表示器が主体で年商6000万円程度を売り上げており、さらなる販促による売上倍増が社長より下された厳命だった。
当時LED表示器は商品として世に出て間もなく、パナソニック、東芝、シャープなど大手企業が市場を抑えており、ネームバリューの低い当社は苦戦を強いられていた。

LED表示器で開拓した店舗向の販路に表示器以外で何か乗せられるものがないか?
設計部と営業所の両担当の間で何ども討議が繰り返された。
とある日、販促にでていた営業担当から、一筋の光明がもたらされた。 
大手スーパーのA社より現場の困りごととして、

「店舗で使用している販促メッセージを繰り返し再生しているカセットテープレコーダーのテープが伸び、音質の劣化が激しく2ケ月に一度テープを新品に変えている。手間とコストがかかり、何かよい方法がないか?」

という内容だった。
LEDの「光」に対して「音」のキーワード、当時カセットテープレコーダー以外に、簡単に録音再生できる商品は無かった。
もし、テープを使わず音質の劣化が無い録音再生器が出来れば売れるかもしれない。
設計担当と営業担当の意見が一致した瞬間だった。 早速商品企画プロジェクトがスタートし、細かな仕様が次々に決められていった。
2000年2月の寒い季節、半導体メモリーに音声を録音再生できる試作品一号が完成した。
試作品に組み込まれたアイデアは何通りもあった。

・カセットテープに比べ、音質が良いこと。
・録音エリアとして90秒×2CHを切り替えて使えること。
・人検知センサーにより、来客を検知し音声再生できること。
・BGMエリアとして90秒×2CHを持ち、録音エリアの音声とミキシングして再生できること。
・etc 、、、

ここで問題となったのが、BGMチャンネルにどんな曲を入れるのかということ。
営業サイドはお気楽で、当時の流行り音楽を入れればいいとの考え。
こいつら著作権保護法を知らんのか?
呆れと怒りが半々な設計担当は、自身を抑えつつ営業サイドに説明を行い、流行り音楽はボツとなった。
しからばどうするか? 自ら曲を作れば大手を振って使える。
しかし誰が作曲するの? またまた袋小路にハマったプロジェクト。
ここでまた救世主となったのが、LED表示器を取り扱ってくれている県内某広告代理店。
彼は仕事がら宣伝広告に付帯する音楽の作成に携わったことがあった。
彼にお願いし、県内にある○○企画㈱の☓☓氏を紹介して頂いた。
☓☓氏は県内の放送局の依頼をうけコマーシャルソングの作曲を行っている人物だった。
曲を作る目処は立った。
しかしここでまたまた問題が発生。
どんな曲をつくるの?
プロジェクトは紛糾し、まとまりがつかない状態が続いた。 必要な曲数は2曲、しかし曲のイメージが絞り込めない。
打開策として

ボサノバ調、ロック調、アップテンポ調、スローテンポ調、サンバ調、民謡調 の6曲

を作成し、出来栄えを確認して2曲に絞ることでプロジェクト内が合意。

み、民謡?

店舗用販促什器に民謡? 設計担当者は商品イメージが混乱し納得することができない。
しかし合意の結果であり、各曲調についてイメージを纏め、作曲がスタートした。
待つこと1ケ月、曲が完成した。ミュージックシンセサイザーによるデジタル音源。
どの曲もそこそこの仕上がりとなっていた。
プロジェクト内で投票にて選考を行い、ボサノバ調とアップテンポ調の2つが選出された。
民謡調にこだわり選考結果にブツブツ言うメンバーもいたが、無視することに。(多数決バンザイ!!)
このとき選ばれたアップテンポ調の曲が今に続くヒットメロディであった。 

今つくづく思う、民謡調を選ばないでアップテンポ調を選んで良かったと。

続いて商品名の選考を行うことに。 本体が擬人化したイメージで仕上がっていたので、「呼び込み君」の提案が出された。
お客様を呼び込むという点では一緒なのだが・・・。
「呼び込み君」のロゴをかわいいイメージにデフォルメすることで採用決定となった。

月日が流れ、2018年、出荷台数4万台を数えるまでに成長してくれた呼び込み君。
誕生から今に至るまで何回も改良を受け、より良い商品へと成長してくれた呼び込み君。

これからも宜しくお願いいたします。